水戸といえば

2024.03.29

先月のことになりますが、2月11日に水戸で開催された日本がん・生殖医療学会に参加してきました。

当院は生殖医療、いわゆる不妊治療を専門とするクリニックですが、がん患者さんの生殖機能を温存する妊孕性温存も行っています。実際には、抗がん剤治療や放射線治療の前に未受精卵子凍結、胚(受精卵)凍結、精子凍結を行います。不妊治療とは異なり、急に連絡があり対応していくことになります。排卵誘発法もランダムスタートといって、月経開始からではなく月経周期のどこからでもランダムに排卵誘発を開始します。そして、約2週間後に採卵を行います。がん生殖医療の特に重要なポイントはカウンセリングです。がんと診断されて不安など気持ちの整理がつかない状況で、さらに妊孕性の低下する可能性があると告げられ、短い時間で妊孕性温存を希望するかを決断しなければなりません。がん診療施設と生殖医療施設との連携が非常に重要となり、その専門スタッフの育成が各施設で急務となっています。今後、妊孕性温存を行う施設認定の要件として、日本がん・生殖医学会が認定している「認定がん・生殖医療ナビゲーター」の資格認定者が勤務していることが必要になります。私はその資格を数年前に取得していますが、更新のためには定期的に講習を受ける必要があります。学会での講習の受講もその要件のひとつになります。

今回の収穫は大きくふたつありました。ひとつは、診療でなやましいと思うことは他の施設でも同様の事例があり、自分たちの施設だけではないと思えたことです。参考にできることもあり、このような専門的な学会に参加する意義を再確認できました。ふたつめは、弁護士の先生の講演でした。がん生殖医療だけではなく、不妊治療にもいえることですが、治療への同意についてです。診療の中で同意書を頂くことは多いのですが、なかには忙しさのあまりに同意書をとらずに問題となり、訴訟になったケースがあるそうです。1件は私もニュースで知っていたのですが、実は他にもう1件あったそうです。同意書へのサインは本人の直筆であることが重要であるため、今後当院では同意書を改定し、自著という記載を追加することにしました。

ちなみに、資格更新のための講習の単位申請のために必要なキーワードは、「水戸黄門」と「納豆」でした。